犬と猫…ときどき、君


手術時間は、二時間と少し。


手が小さな女の人の方が、男の人よりもオペに向いてるという話を聞いた事があるけど、城戸のオペを見る度、それは嘘なんじゃないかって思う。


城戸のオペは、本当に無駄がない。

判断が早いから時間も短い上に、縫合だって上手だから、治りも早くて傷口も綺麗。


「あー……しんどっ!!」

「……」

オペを終えて、医局でグッタリとソファーに横たわる城戸は、オペ中の彼とは別人なんじゃないかって本気で心配になる。


「城戸ー……」

「何?」

「ごめん」

「……」

「あと、ありがとう」

寝転んだまま、目の上に置いた腕を少しずらし、その隙間から私を見上げる城戸。


あの時私が倒れていたら、助手をする人間が誰もいなくなって……。

もしそうなっていたら、デンちゃんは助からなくて、私はまたあの時と同じ気持ちを経験するところだった。


「それに、誕生日だったのに。ごめんね」

壁の時計を見上げれば、もう二十二時半過ぎ。


「オペ室の片付けは私がやるから、帰っていいよ?」

どうせ、デンちゃんの様子を診る為に今日は泊まりだろうから。


視線を城戸に戻してそう告げた私に、困ったように笑った城戸は、ゆっくりと起き上がって、私の頭の上に、その大きな手をポンっと乗せたんだ。


温かい城戸のその手の温もりを感じるのも、あのハナちゃんのオペの日以来で……。


心臓が、一瞬跳ね上がる。


だけど城戸は、すぐにその手をスッと離すと、「片付けまでがオペなんですよー」なんて笑いながら、遠足を思わせる言葉を口にする。


そして言い返そうとする私を置き去りにして、再びオペ室に向かって歩いて行ったんだ。