犬と猫…ときどき、君


デンちゃんを抱えて来た城戸と一緒に、準備しておいたオペ着に着替える。

だけど、さっきから手の震えが止まらない。

仰向けにしたデンちゃんのお腹の毛を刈り、消毒をする。


――そして。


「芹沢?」

「……」

メスを握って、それをお腹に当てた瞬間、私の手はピタリと動かなくなってしまった。


「城戸、ごめん」

「……」

「無理……」

ゆっくりと城戸に目を向けると、少し困惑したような表情が目に入って、視界が滲む。


急がないといけないのに。

わかっているのに、指先の小さな震えがどうしても治まらない。


そんな私の口から零れてしまったのは――……。

「城戸、ごめん。……怖い」

弱々しく震える、そんな言葉だった。


「無理だよ」

「芹沢」

「だって、また助けられなかったら……っ」

「おい!!」

息を飲む音が耳元で自棄に大きく聞こえて、目の前がチカチカと霞み出す。

この感覚は、何かに似ている。


「……っ」

「芹沢?」

そうだ……。

貧血で倒れる時の、あの痺れるような感覚だ。


少しずつ唇の辺りが冷たくなってくるのを感じて、手に持っていたメスを置こうとした瞬間――……

「胡桃!!」

大きな声と共に、城戸の手が私の手をグッと握った。


「ちゃんとしろっ!! 今お前が倒れたら、コイツ助からないんだぞ!?」


わかってる。

わかってるけど……。


「オペは俺がやるから、終わるまでは倒れるな。いいな!?」

真っ直ぐに、私を見据える城戸の瞳。


城戸……。


「絶対助ける」

その力強い瞳に、私は少しだけ涙を零し、何度も小さく頷いた。