午前中の診療が終わって、お弁当を食べる私の隣には聡君。
城戸は今日、誕生日だし。
早めに帰ってもらおうと思って、午後から聡君にお手伝いをお願いしていた。
いつものように聡君が登場するや否や、ドッグランに向かった城戸をチラッと見た後、私は再びお弁当に視線を落とす。
「今年もあいつの誕生日、みんなで祝ってやらないの?」
隣の席で頬杖を付いて城戸に視線を向ける聡君が、首を傾げながら私にそんな質問を投げかけた。
「あー、毎年祝ってないもんね」
「な。何か可愛そうじゃねーか?」
「でも、城戸には松元さんがいるし。一番最初にお祝いするのは、やっぱり彼女の方がいい気がする」
「なるほどね」
モゴモゴと、まるで言い訳をするようにそう口にした私を見て、聡君はいつものように、少し困ったように笑う。
そして、そのまま視線を私の机の上に落とした。
「それ、ホントに行かないの?」
指をさしたのは、この前言っていた沖縄での薬科セミナーの要項。
「うん。行かないつもり」
「何で?」
真っ直ぐな聡君の視線に、思わず下を向いてしまったのは、自分の中で後ろめたい気持ちがあるからだと思う。
本当は行きたいし、行った方がいいのは分かってる。
動物病院には薬剤師さんがいないから、私達が薬の処方を間違えたら、それに気付く人は誰もいない。
だから、薬のしっかりした知識は必要だし、何よりも、今はどんどん新しい薬が開発されるから、その知識や情報というのは本当に大事なんだ。
それが分かっているのに――……。
「あの女が来るかもしれないから?」
「……うん」
松元さんに会いたくないとか、そんなプライベートな理由で私は逃げているんだ。
「まぁ、わからんでもないけどな」
「……」
「俺だって、胡桃の立場だったら会いたくないだろうし。ましてや、城戸がそこにいるのであれば尚更だな」
そう言った後、聡君は何かを考え込むように深い溜め息を一つ吐いた。
そして徐に携帯を取り出すと、それを使ってどこかに電話をかけ始める。

