「城戸ー! 遅ぇよ!」
「悪ぃ。コイツがブス返上の為に、頑張って化粧とかするから」
「はぁ!? 城戸が途中でアイスとか食べたからでしょ!!」
「お前だって食ってたじゃん」
「そうだけどっ」
「あのー……」
「えっ!?」
おバカな城戸と言い合いをする私に、少し困ったようにかけられたその声。
それに、ハッとしながら視線を落とした。
「芹沢先生ですか?」
「あ……はい! すみません、芹沢胡桃です。初めまして」
慌てて頭を下げた私を、クスリと笑ったその人は、
「初めまして。城戸が病院を辞めたお陰で、未だに辞められずにいる今野 司《こんの つかさ》です」
黒髪に黒縁メガネの、今野先生。
「知らねーよ。早いもん勝ちだ」
それに、フンッと鼻で笑った城戸を見て、“あははっ!”と楽しそうに笑う彼は、確かにいい人そう。
「つーか城戸、嘘吐いてんじゃねーよ」
「はー? 何が?」
今野先生の正面に、とぼけたようなセリフを吐きながら腰を下ろす城戸。
私もその隣にストンと腰を下ろす。
「芹沢先生、やっぱり“美人院長”じゃん」
「はっ!? いえ――」
「おー。バレた? でも、うちのだから手ぇ出すなよー」
何……よ。
どうせ、いつもの冷やかしでしょ?
“うちの”っていうのも、“うちの病院の”って事で、“俺の”の意味とは、絶対に違う。
そんな事は、ちゃんと分かってるのに。
「はぁー……」
「どした?」
「別に何でもない」
思いもよらない城戸の返答に、一瞬ドキッとしてしまう自分が情けない。
そんな私の目の前にメニュー表を差し出した今野先生は、私の顔をじっと見つめながら、口を開いたんだ。
「もしかして、芹沢先生って煙草ダメ?」
「え? あ、はい。喘息があって……」
「あー、なるほどなるほどー」
突然の意味不明な質問。
そして、意味不明な納得。
――一体、何?

