犬と猫…ときどき、君



――城戸の休みが明けた数日後。


「やっぱり南は暖かいね~!」

「南じゃねぇよ。西だ、西」

たくさんの人が行きかう空港内。

初めての福岡に、はしゃぎながら周りをキョロキョロ見回す私を見て、城戸はバカにしたように、鼻で笑ってそんなセリフを吐いた。


「別にいいじゃん。南の方が、リゾートチックな響きで」

「はいはい、そうですね。よかったですね」

「城戸だってホントは浮かれてるくせに!!」

「はー? 何のことですかー?」

「大体さ、飛行機でも窓際の席と代われとか、子供じゃん、子供!!」

「はぁ? 童心を忘れてないだけですけど」

「もー、お前ら頼むから静かにしろよ!!」

「だって城戸がぁ!!」

「でた! お前はすぐ及川さんにチクるー」

「だから、うっせーって!!」


珍しく限界点を超えたらしい聡君の声に、ついつい唇を尖らせる。


セミナーに参加する為に降り立った、福岡の空港。

隣を歩く城戸に、チラリと視線を向ければ、

「何だよ」

「べっつに~」


さっきの事を根に持っているのか、何やら攻撃的な言葉をぶつけてくる。


休みが明けて、病院に復帰した城戸は、まるであの日の事がなかったかのように、今まで通り――もしかしたら、今まで以上に――人をからかっては面白がる。

しかも、逆襲に合って、逆ギレする始末。

つまりは、“元の関係”に戻ったって事。


そもそも、別に何かが動き出していたワケでもないから、元も何もないんだけどさ。


だけど、ここ最近なにかが変わってきている気がしていた私は、その城戸の様子に何故か少しだけ、取り残されてしまったような気分なんだ。


マコが言うには――「城戸も頭を冷やして、自分の立場を弁《わきま》えたんでしょ! フンッ!!」って事だけど……。


「“立場”って何よ」

「は?」

「……何でもない」


口から、だだ漏れだったらしい思考に、渦中の城戸が反応した。