犬と猫…ときどき、君


「どういう事だ!!」

ハナちゃんを車に乗せ、一番告げたくない言葉を口にした瞬間、米原さんのお父さんが大声を上げた。


――ある程度、覚悟はしていたけど……。


「米原さん、落ち着いて聞いて下さい。私達は米原さんの同意の下、可能な限りの処置はしました」

「それでも、ハナは助からなかっただろう!? 何でそれなのに金を払うんだ!! そんなのおかしいだろう!? それに、さっきだって、やれ検査費だなんだと……一万以上払ったって聞いたぞ!!」

「検査はハナちゃんの状態を把握するために必要な物でしたし、明細もきちんとお渡ししたはずです」

「そんなの、そっちの勝手な言い分だろう!!」


どうして伝わらないんだろう。

命はお金じゃ買えないけれど、それでも私達は、病院を経営していく上で、どうしてもお金を貰わないといけない。


こんな事だって、言わないで済むなら言いたくないのに……。


「今はハナちゃんの事もありますし、もう少し落ち着いてからで構いませんので……」

「ふざけるな!! 金は払わないからな!!」

その言葉に思わず考え込んでしまった私は、一瞬言葉に詰まる。


ここで「じゃー、いいです」と言えたら、どんなに楽か……。

そんな“してはいけない事”を考え始めた私の肩に、大きな手がポンと置かれた。


その手の温もりは――。

「城戸先生……」

城戸の大きくて、綺麗なその手のもの。


真っ黒な瞳を、驚く私から、ゆっくりと米原さんに向けた城戸は、静かに口を開いた。