犬と猫…ときどき、君


「ここの獣医は、俺と胡桃だろう?」

「城戸、あのね……っ」

「俺は獣医として、頼りないとか?」

悲しみと怒りを含む城戸の声に、私の呼吸が震え出す。


そんなつもりじゃなかった……。

――だけど。


「くだらねぇ事に気を取られて、人のことナメてんじゃねぇぞ」

「ごめん……」

城戸の言う事は、当たってる。


私は、城戸と松元さんが一緒にいるという事実を、目の当たりにしたくなくて……。


「ごめんなさい」

だから尚更、城戸に連絡をするのを躊躇ったんだ。

結局は、それが一番の理由。


「ふざけんなよ」

私の言葉に、苛立ったように溜め息を零し、髪を掻き回した城戸だったけど、

「お前がそれを言うのか?」

次の瞬間、静まり返ったオペ室に響いたのは、聡君の聞き慣れない低い声だった。


「城戸」

「……」

「そうさせたのは、誰だ?」

「……っ」

聡君の言葉に、城戸が息を呑むのが分かった。


「お前じゃないのか?」

「聡君、いいから!! やめてっ!!」

再び、静まり返るオペ室。


「すみません……」

「俺に謝ってもしょうがないだろ」

「芹沢、悪かったな」

下を向いていた顔をゆっくりと上げた城戸が、私の目を真っ直ぐ見つめ、静かにそう口にした。


怒りの色を、再び悲しみの色に変えるその瞳。


――悪いのは、私だ。

それを城戸にも、聡君にも伝えたかったのに……。


もう一度口を開いた瞬間、ゆっくりと扉が開いて、目を真っ赤にした米原さんが父親と思われる人と一緒に戻ってきて。

だから、私はそれ以上、何も口にする事が出来なかった。