犬と猫…ときどき、君


「……お願い」

お願い、繋がって!!

焦る私を、まるで嘲笑うかのように、呼び出し音がノロノロと鳴り続ける。


優に十回はその音が鳴り響いた頃、プツッという音と共にそれが繋がった。


「聡君!? 今どこにいる!?」

「……胡桃? 研究室だけど、どうした?」

私のあまりの剣幕に驚いたのか、少し低い声で尋ねる聡君に、胸を撫で下ろす。


「お願い、助けて……」

自分の口から零れ落ちた、あまりにも弱々しいその声。


「五分だけ待ってて」

事情を早口で説明した私に、聡君はそう言って、電話を切った。


心強い助っ人に安堵で震える指をキュッと握りしめ、急いで診察室に戻り、米原さんに声をかける。


「米原さん、さっきお話した通り、ハナちゃんはとても危険な状態です。しかも、時間の経過と共に容態は悪化しています」

「だから、何とかしてって言ってるんでしょう!?」


そんな彼女の前に、これを出すのは本当に辛い。

でも、これがないと次のステップに進むわけにはいかないから……。


「ハナちゃんを助けるには、手術をするしかありません」

「分かってる!! それはさっき聞いた!!」

「もちろん、全力を尽くしますが……。正直、難しいと思います」

そう告げたあと、彼女の前に、一枚の紙を差し出した。


「これに、サインをお願いします」

「何……これ」

「手術の同意書です。ハナちゃんの状態をご自身で理解した上で、それでも同意して頂けるのであれば、手術を行います」

「……」

「ただ、そこにもありますように、100%成功の保障は出来ません。ハナちゃんの場合は、先ほどお話させて頂いた通り、助からない確率が高いです」


まるで、オーナーさんを追い詰めるような、この書類。

大きなオペでない場合は、あくまで建前的に行われるこの作業も、こういう状況下では、話すこっちも本当に辛いんだ。