犬と猫…ときどき、君


後ろを振り返ると、瞳に映ったのは困惑顔の胡桃の姿。


――“その体に、アイツはどんな風に触れた?”


一度は消したはずのその感情が、強くなった胡桃の香りに一気に蘇って、胸をザワつかせる。

屈んで、俺よりも背の低い胡桃の顔を覗き込めば、驚いたようにその目を丸くして。


なぁ、胡桃……。

俺はこの気持ちを、お前に伝えるわけにはいかないからさ。

だから、アイツに――お前の“元彼氏”に、こんなに嫉妬してるんだ。


握りしめた手に力が入っている事に気付いて、ゆっくりとそれを開く。

それと同時に、ほんの少しだけ頭の中が冷静になった。


「ブラインド」

「へっ!?」

もーホントさぁ……。

着替える時くらいブラインドを下ろせという、当然の注意に、胡桃は心の底から“何で?”という顔をする。


呆れながらも、もう一抗議してやろうと、口を開いた瞬間だった。


「彼女いるんだから、他の女の子のこんな格好見たって、何とも思わないでしょー?」

「――っ」

胡桃のその一言で頭に蘇ったのは、昨日のあの女の勝ち誇ったような顔。


ダメ……だ。

小さく息を呑んで、心を落ち着かせようとしたのに。


「城戸、あのねっ」


“城戸”

“智也”

当然だろ。
あの男は、元彼氏で……。

だけど、俺だって“元彼氏”だろ?

その差は何だ?


アイツが“智也”で、俺が“城戸”と呼ばれている、その差は何?