それなのに目の前の城戸春希は、一瞬星がいっぱいの夜空を仰ぎ、ちょっと困ったように笑いながら溜め息を吐いたんだ。 「あんま懐くなよー」 ――“懐く”? 「……何で?」 よく分からない彼の言葉に首を傾げ、背の高い私が見上げた、丁度先にあるその瞳を覗き込む。 そんな私に、まるで動物を追い払うように“シッシッ!”と手をパタパタさせた彼は、そのまま私の目を大きな手で隠して、 「だから、懐くなって」 今度は何やら、楽しそうに笑った。