篠崎と別れて再び車を走らせ、久々に母校に足を踏み入れた。
変わらない駐車場に車を停め、研究棟に向かう。
必要な電灯以外は消された薄暗い廊下に、足音が響く。
目指す先の扉から漏れ出る明かりに、俺は複雑な思いで頭を掻いた。
「……ったくよー」
溜め息を吐きながらドアノブに手をかけ、静かにそれを回す。
目の前で、ゆっくりと開く扉。
漏れる明かりがどんどん強くなって、その眩しさに僅かに目を細めた。
「あれ? 城戸……さん?」
「おー、コンバンハ」
病理の居室に一人でいたのは、やっぱり仲野。
久し振りに見る仲野は、当然だけどやっぱりあの頃と変わらない“仲野”で……。
首から提げている、カチカチと数字を減らしていくタイマーを見ると、やっぱり実験の最中だったんだろう。
ホント真面目な奴……。
何も知らない当の仲野は、小さく顔を顰める俺に「どうしたんですか?」なんて、少し驚いた様子で首を傾げている。
「中村先生に何か用事ですか? って言っても、さっき帰っちゃったんですけど……」
「まだ追っかければ間に合うかも」と付け加え席を立った仲野を、俺は少しだけ笑って制したんだ。
「いや、お前に用事」
「え……?」
笑っている俺とは対照的に、その表情をスッと変えて、仲野は明らかに動揺の色を見せる。
「ここ、座っていい?」
きっと仲野が見ていたのであろう、実験データが散乱するテーブル。
俺はそこを指差した。
「……どうぞ。あの、コーヒー……淹れます」
「ありがと。でも、この後まだ行くとこあるからいいわ」
「そうですか……」
少し気まずそうに視線を落とす仲野は、きっと気づいている。
だったら、話は早い。

