犬と猫…ときどき、君


「もぉーあいつ、すっげー逃げる逃げる。ボクちゃん疲れちゃったよ~」

おどけながら目の前で笑う篠崎の言葉を、俺はまだ飲み込みきれずにいた。


「ホントに、仲野なのか?」

篠崎の言う事を疑ってるんじゃないんだ。

ただ、あの仲野が?

控えめだけど、本当に真面目で、穏やかで……。

そんな俺の思考を読んだかのようなタイミングで、篠崎が再び口を開く。


「ついでに、仲野クンと松元サン、時々会ってるって知ってた?」

「……」

「あとコレね。さすがに、パスかけたメールファイル開くのは大変だったよー」

そう言いながら俺に向けられた、ノートパソコンの液晶画面。


「ね? これで十分な証拠になると思わない?」

チカチカとした光の中に映し出されていたのは、多分――いや、確実に、“あのサイト”の管理や、書き込みについての指示をする、松元サンからの仲野へのメールだった。

スクロールさせる度、次々と画面に映し出されるメールの内容。

「……」

マウスを操作する手に、力がこもる。


「取りあえず、サイトはすぐにぶっ潰せるよ」

「……」

「あと、仲野クンのパソコンと、あのサイトに書き込みしてた奴のパソコンも」

「え……?」

篠崎の発言に、画面に見入っていた視線を上げる。


「取りあえず、俺はクソ管理人・仲野クンのパソコンはぶっ壊そうと思ったんだけど、一応春希の意見も聞いてからと思って」

「……」

「ムカつくけど、仲野って奴の事、俺あんま知らねーし。……どうする?」


――仲野。

アイツは、どうしてこんな事を?


きっと理由がある。

どうしても、こうしないといけなかった理由が……。