犬と猫…ときどき、君



「お待っとさん」

俺を部屋に招き入れ、扉を閉めた篠崎は、目の前に腰を下ろして机に頬杖を付きながら俺を見上げた。


「アホ管理人、見つけたぞ」

「そっか……」

もうすぐ、わかる。
これでやっと、胡桃を解放出来るんだ。

逸る気持ちを落ち着かせるように、長く息を吐き出した。


「――で?」

「んー、その前に。春希に聞きたい事っつーか、確認したい事が一つあんだわ」

「確認したい事?」

不意打ちの発言に、眉根を寄せた俺の目を、篠崎は真っ直ぐ見据える。


「管理人のパソコンにちょっぴりお邪魔して色々調べてたらさ、そいつ、未だに大学内に出入りしてるヤツっぽいんだよね」

「え?」

――大学に?

俺を見上げたままの篠崎のその一言に、一瞬、呆気に取られる。

だけど、そのすぐ後に付け足された情報で、俺は言葉を失った。


「しかもさ、春希と芹沢と同じ病理の研究室」


うちの研究室?

それって、まさか……。


「……っ」

ドクドクと、一気にその動きを速め、嫌な音を立て始めた心臓に胸が苦しくなって、息を呑む。


俺達と同時期に大学に出入りしていた人物で、尚且つ、未だに大学にいるヤツなんて……。

いや、そんなはずないだろ。

だけど――……。

今まで経験した事がないくらい、混乱している頭の中。

それを落ち着かせようと額に当てた手が、妙に冷たく感じる。


「……」

俺が何を考えているのか、それを全て理解しているような表情の篠崎に、俺は思わず、脳裏に浮かんだその名前を口にしてしまったんだ。