次の日の朝、病院の駐車場に着くと、もう城戸の車が停まっていた。
今日も遅番なのに、ホントに倒れますよ?
そんな事を思いながら唇を尖らせる私の目の前には、黒の大きな四駆車。
車の運転が好きで、アウトドア好きの城戸に、よく似合う車だと思う。
それを横目に通り過ぎ、まだ電気を通していない自動ドアを手で押し開けた。
エアコンの入っていない病院の廊下の空気は、ひんやりと冷たくて、やっぱり“病院”独特の匂いがする。
「はぁー……」
昨日のお礼、言うべきだよね?
“昨日はありがとう”
それだけでいい?
でもそれじゃー、一体何に対してのお礼かって話だよね。
むしろ、“昨日はごめんね”?
「ん~」
何だかどっちもしっくりこない。
しかも、何故か緊張してるし。
「ふぅ……」
医局の扉の前で一度立ち止まり、長く息を吐き出した後、私はゆっくりとそれを押し開けた。
「おはよ」
「……うぉっ! ビビったぁ!!」
医局のドアを開けると、丁度城戸がスクラブの上に白衣を羽織ったところで、背後から声をかけた私に、無駄に驚きながら振り返る。
「……何そんな驚いてんの?」
「だってお前、早くねぇか?」
城戸が視線を移した壁掛け時計の針は、七時三十分を指していた。
「……っ」
つい、言葉に詰まってしまったのは――
「寝れなかったとか?」
下を向いて、白衣の胸ポケットにペンをポイポイ差し込む城戸の、言う通り。
色々考え過ぎて、眠れなかったんだ。
――と言うより、気付いたら朝だった。
相変わらずお気に入りの真っ赤なソファーの上で、クッションを抱きしめる私の頭に浮かんでいたのは、智也の悲しそうな顔。
それと、私の頬に手を添えた、城戸の真っ直で綺麗な瞳。
それが入れ替わり立ち替わり、浮かんでは消えていって、頭の中がよくわからない事になっていた。

