犬と猫…ときどき、君


えっと、つまり何が言いたいのかって言うと……。

「さっきのだって、その延長なんだから」

そういう事。


私が泣いていたから。
辛そうに見えたから。

だから手を差し伸べてくれただけ。


「……そんなの、分かってますよーだ」

広がっていく波紋を見つめながら、ぽつりとそんな言葉を落として、少しのぼせて熱くなった頬に、手を添えてみる。


「……」

もう忘れちゃった。

さっきは、あんなにも鮮明に思い出したのに。


「もう忘れちゃったよ、春希」

数時間前、私の頬に触れていたあの手の温もりは、もう思い出せない。


「春希のバァカ」


“春希”

久し振りに口にした、その名前。


湿度の高いバスルームの空気のせいで、いつまでも、その言葉がその辺を漂っている気がする。


「明日……顔合わせにくいじゃん」


さっきから、私の口をついて出るのは、大きな溜め息ばかり。