犬と猫…ときどき、君


昔、城戸と別れた時。

その理由を聞いて激怒するマコに、

「城戸の事、マジで見損なった!! 胡桃はムカつかないの!?」

そう聞かれた事があった。


一緒に働く事になった時も、

「信じられない……」

最早呆れたように、呆然としながらそう言われた。


だけど、城戸が松元さんと付き合っているって、あの“掲示板”で見た瞬間、私の心に湧き上がった感情は“悲しみ”だけだったんだ。


もしかしたら、“怒り”とか“悔しい”とか、そんな感情もあったのかもしれないけど。

それよりも、“どうして?”という、悲しみの感情の方が、断然大きかった。


繋ぎ止めたかった、城戸の気持ち。

だけど私には、離れてしまった城戸の気持ちを引き戻すだけの力が、もう残っていなかった。


「ふぅー……」

大きく息を吐き出した私は、バスタブの中で膝を抱え、そこに頭をもたげた。


城戸は、すごく優しい人。


“どうでもいい”って顔をしているくせに、目の前で困っている人がいると放っておけない。

本人が気付かないくらいさりげなく、救いの手を差し伸べる。


昔からそうだった。

篠崎軍団の中でも、はしゃぎ過ぎる軍団を、唯一止められたのが城戸。

みんなも、城戸がどういう人間か知っているから、「ハルキュン、ノリが悪いのねっ!」なんて言いながらも、素直にそれに従うし、何かあれば頼りにする。


そもそも、私を気にかけ始めたきっかけだって、同じだったのかもしれない。


新歓で窒息寸前だった私を、外に連れ出した城戸。

それだって、きっと“困っていたから”なんだと思う。

……って事は、その相手が私じゃなくても、そうしたって事になる?


「……」

それはやっぱり嫌かも。

そりゃー辛い時期もあったけど、どうしたって、城戸と過ごした時間を無かった事になんて出来ない。

少なくとも、私があんなに楽しく大学生活を送れたのは、城戸のおかげだもん。


それに、今では数少ない男友達の一人なワケだし。