「はぁー……」
ゆっくり息を吐き出して、小さく鼻を啜る。
私が泣いてどうするの。
自分に言い聞かせるように、何度か頭を振った後、しゃがみ込んで膝に埋めていた顔を上げた。
その瞬間、耳に届いたのは、砂利が擦れる小さな音と、
「帰ろう」
ヒリヒリと痛む心に優しく響く、城戸の声だった。
「き……ど?」
「おー」
ゆっくりと私の前にしゃがみ込み、少し困ったように溜め息を零して。
真っ黒な瞳で、私を真っ直ぐ見つめる。
帰ったと思っていた城戸の登場で、それでなくても混乱しているのに。
濡れた私の頬に、温かい手の平でそっと触るから、思わず息を呑んだ。
涙を拭うその手の温もりは、あの頃と全く同じ。
――忘れていたはずの、その温もり。
それなのに、どうしてこんなにも簡単に、たった一瞬で私の中に蘇ってしまったんだろう。
智也のものとは全く違う、それ。
比べたくなんかない。
比べたりなんか、しちゃいけない。
それなのに……。

