犬と猫…ときどき、君


――“何が嫌”?

嫌なところなんて、何もない。

だけど。


「だから、智也に同じだけ気持ちを返す事が出来ない。本当にごめん」

その目を見つめながら、ゆっくりと口を開く。


結局は、自分の為。

智也に申し訳ないと思いながらも、想われれば想われるだけ追い込まれる自分の気持ち。

気付いてはいけない何かに、気付きそうになる……。

その感覚が、怖い。


「俺はそれでも構わないよ? 胡桃が俺と同じだけ俺を愛する必要なんてないと思う。だから――」

智也のその言葉を聞いた瞬間、私の脳裏に浮かんだ、デジャヴのようなその感覚。

私はどこかで、同じような言葉を聞いた気がする。


――どこ?

どこだっけ?

ズキズキと小さな痛みが広がり始めた頭を、少しずつ少しずつ落ち着かせていく。


あぁ、そうか。

そうなんだ。

少しだけ、分かってしまった気がする。


「ごめん。無理なの」

「……」

「私はきっと、知ってるんだと思う」

「え?」

「自分が好きなのと同じくらい、相手に想ってもらえない辛さ」


目の前の智也は、数年前の私だ。

あの頃、私が必死で繋ぎ止めたいと願っていたのは――……。


「だから、ごめんなさい」


紛れもなく、城戸の気持ち。