犬と猫…ときどき、君



「もう真っ暗だな」

「ホントだねー」

空を見上げながら隣に並ぶ城戸につられて、同じように天を仰ごうと視線を上げる。

だけどその途中、病院の外の塀の傍に立っていた人物が目に映って……。


城戸と一緒に出て来た事を、ますます後悔した。


「胡桃」

その声を最後に聞いたのは、数日前の朝。

「智……也?」

何で、こんな所にいるの?


驚いて言葉を失う私の前に、一歩近寄ったその人は、数日前に別れた私の元彼。


「ごめん、職場まで押し掛けて」

そう言いながら、付き合っていた頃と変わらない優しい笑顔を私に向けたあと……その視線を、ゆっくりと隣に移動させた。


「お話は色々伺ってましたけど、初めまして、ですよね?」

「そうですね。獣医師の城戸です」

「浅野 智也《あさの ともや》です」

呆然とする私の目の前で、穏やかに挨拶を交わす……元彼が二人。


「智也、どうしたの?」

その微妙な空間に耐えられなくて、智也の目の前まで歩み寄った私に、智也の指が、ゆっくりと伸ばされる。


「胡桃?」

「……うん」

そっと、躊躇いながら私の頬に触れた智也の指先。


やだな……。

こんなところ、同じ職場の人間に――ましてや、城戸になんて見られたくない。


一瞬俯いた私の視界の端に城戸のスニーカーが映り、それがゆっくりと向きを変え、静かに、何も言わずに離れていく気配がした。

――城戸。

「胡桃、やっぱり納得いかない」

――智也。

もう、頭の中がゴチャゴチャだ。


「何が嫌だった? もう一回、ちゃんと聞かせて」

「あの時は、頭が混乱してて」と、付け加え、智也はほんの少し困ったように笑う。