犬と猫…ときどき、君


「なぁ」

「んー?」


いつの間にか向けられていた城戸の視線に、平静を装って返事をするのにも慣れてしまった。


「及川さん、今度の眼科セミナー行くって?」

「あー! うん、行くって言ってた。三人で一緒にセミナー出るのって、初めてだよね」

「おー。だって、平原先生の眼科セミナーって、どんだけレアなんだよ」

「ねー! 楽しみ!」


国家資格を取って獣医になっても、勉強はずっと続く。

最新の医療を学ばないと、きちんとした治療も出来ないから、時々大きな都市で開催されるセミナーに参加して、それを学ぶのだ。


「福岡かぁー……。私行った事ないんだよね」

「俺もねぇよ」

「ウソ!?」

「……何で不満げなんだよ」

「だって、聡君も初めて行くって言ってたし、迷子とかになったら嫌じゃん」


本気で心配する私の目の前で、“くくくっ”と笑った城戸の表情は、昔と同じ。


「方向音痴のお前と一緒にすんなよ」

「……」

「合宿行った時、お前にナビ任すと笑い止まんなくて大変だったよな」

まるであの頃を思い出すかのように目を細めながら楽しそうに笑う城戸に、一瞬ドキリとした。


「地図クルクル回しながら見るヤツ、初めて見たし」

「……うるさいなぁ。だって、曲がったらどっちが北かわかんなくなるじゃん」

「だからって、地図回すなよ」


相変わらず楽しそうに笑い続ける城戸に、思わず唇を尖らせた私だったけど。


「楽しかったな」

ポツリと落とされたその言葉に、何も言えなくなってしまった。


城戸は時々、こんな表情を見せる。

フッと、本当に一瞬、悲しそうにその綺麗な瞳を曇らせるんだ。