犬と猫…ときどき、君


「はぁー……、腰痛い」

椅子に腰掛け、机に突っ伏しながら見上げた時計は、もう二十一時過ぎを指していた。

窓から見える四角い空は、もう真っ暗。


「なぁ、やっぱ受付時間三十分繰り上げねぇ?」

頭上から聞こえた声にゆっくり視線を上げると、サーバーからカップに移したコーヒーを、私に差し出す城戸の姿が映る。


「ありがとー」

いい香りの湯気がふわりと立つカップを受け取ると、目の前の自分の机に腰掛けた。


「さすがに二人でこの状態はしんどいだろ?」

診療時間は、一応十九時まで。

でも、その日受付をした分は消化しないといけないから、台風でも来ない限り十九時になんて終わらないのが現状だ。


「うーん……。でも、そうすると仕事終わってから来られない人が増えちゃうよねぇ」

「まぁなー……」

それっきり、シンと静まり返る医局。

大抵は平気だけど、時々こんな風にその空気が少しだけ重たく感じる時がある。


こっそりと上げた視線の先には、頬杖を付き、指先でペンを器用にクルクルと回しながらテキストに視線を落とす城戸の姿。

その姿を、私は少し懐かしい気持ちで眺めてしまう。


昔から変わらない、城戸の癖の一つだ。


「……」

ダメだなぁ。

何か、間が持たない。


「三連休、どこか行くの?」


――あ。

いくら沈黙に耐え切れなかったからって、何でこんな話題を選んじゃったんだろ。

ゆっくりと私に視線を移す城戸と目が合った瞬間、湧き上がったのは後悔の気持ち。


「……別に」

ほらね。

わかってるのに。


未だに私に申し訳ないと思っているのか、城戸はいつも松元さんとの事を聞こうとすると、こんな風に話を逸らすんだ。