犬と猫…ときどき、君


手に持っていたマグカップを握りしめたまま、また考え込んでいた。


考えないようにしたって、どうしてもその事ばかりで頭がいっぱいになってしまって……。

ホント、私はいつからこんなに恋愛に依存するようになっちゃったんだろう。


「胡桃」

「……え?」

気付いたら、また視線を落としてボーっとしていて、春希の声に少し戸惑いながら顔を上げた。


「頑張ったから、ご褒美ちょーだい」

そんな言葉と共に、ゆっくりと私に向けて伸ばされる、春希の指先。


ドクン。


その手が頬に優しく触れて、そのまま後頭部に回される。


ドクン。


息を呑む私の瞳に映ったのは、ゆっくりと顔を寄せて、瞳を伏せた春希で……。


「……っ」

ダメだ。


「いやっ!!」

「……え?」

「っ!! あ……の、ごめんっ」

微かに震える手で、自分の口元を覆う。


「ごめんなさい。あの……最近ちょっと喉痛くて、風邪ひいたかもしれなくて」

「……」

「まだ実験しないといけないのに、二人とも寝込んだら大変でしょ?」

「胡桃」

「……ごめん」


お願いだから、

そんな目で見ないで。


だって、仕方がないんだよ。


真っ青な空と春希の影。

それに近寄る、あの子の影。


こういう状況になると、いつも頭に浮かぶのは……あの時の情景。


――ねぇ、あの子にも、同じようにキスをしたの?


その綺麗な指を髪に絡ませて、優しい雨みたいな、そんなキスをあの子にもしたんでしょう?