犬と猫…ときどき、君


「何で別れたの?」

その一言に、心臓がドクンと音を立てる。

何でそんな事……。


「色々あるんだってば」

「だから、その“色々”って何だよ」

「城戸には関係ない」

小さくポツリと言葉を落とし、お弁当の蓋を閉じて席を立って、速まる心臓を鎮めようと、自分のロッカーに向かいながら静かに息を吐き出した。


――それなのに。


「胡桃」

「……っ」

城戸のその一言で、努力が全てムダになってしまった。

「胡桃?」

「……やめてよ」

「え?」

「“くるみ”なんて呼ばないで」


そうだよ……。


「何回も言ってるでしょ?」

「……」

「“くるみ”って、呼ばないで」

「……悪かったよ」


一瞬下を向き、大きく息を吐き出した城戸は――……

「癖って、なかなか抜けないもんだな」

ゆっくり私に視線を戻すと、困ったように笑った。