犬と猫…ときどき、君


それに気づいたのは、大学のホールで春希とお昼を食べている時だった。

「ハルキさん!」

柔かいはずのその声が、私の胸に突き刺さる。


――“ハルキさん”

聞き慣れた声と、聞き慣れないその呼び方。


ゆっくりと後ろを振り返ると、そこにはピンク色のフワフワのニットに、ショートパンツ姿の、すごく女の子らしい恰好をした“しーチャン”が立っていた。


私と目があった瞬間、小さく会釈をして少し笑った彼女は、そのまま春希の隣の椅子に腰を下ろしたんだ。


そして、まるで私の存在を無視するかのように話し始めた、春希が不在だった、昨日のバイト先での“面白話”。


「聞いて下さいよー! 昨日店長がぁー」

「……っ」


語尾を伸ばすその話し方も、


「酷くないですかぁー?」


春希を見上げる、その上目遣いも……。


その全てが、私の苛立ちを大きくする。


自分でも、どうしてこんなにイライラするのかが分らない。

だけどダメなんだ。

やっぱりこの子は……苦手なんだ。


目の前で、楽しそうに話す彼女に、特に大きな反応は示さないけれど、それでも昔より確実に気を許している春希のその表情が、何よりも嫌だった。


だけど、それだけなら良かった。


「松元、悪いけど、今メシ食ってるから」

「……」

“松元”。

彼女の事を、そう呼んだ春希のその声に、お箸を持つ手が止まった。


いつの間にか春希の中で“松元さん”から“松元”に変わった、彼女。


「ふー……」

私は自分を落ち着かせようと、ゆっくりと息を吐き出した。

それでもこのモヤモヤとした気持ちは治まらなくて……。


やっぱり嫌だ。

こんな感情を抱く、私がおかしい?


小さく震え出す指先と、滲みそうになる視界。

キンキンとした声で話を続ける彼女の声に、唇をグッと噛みしめた。