「春希……っ」
どうしても耐えきれなくて、思わずシャツの袖を掴んで、その顔を見上げた。
「……どうした?」
――私は、どうすればいい?
春希のことは信じてる。
現にソフトの時だって、他の人たちが彼女の事を“しーチャン”と呼ぶ中、春希と篠崎君だけは、彼女の事を“松元さん”と、そう呼んでいたし。
春希が彼女に笑いかけているところなんて、一度も見た事がなかった。
信じてる。
でも……
あの子は、何故か怖いんだ。
「胡桃?」
私の瞳を覗き込む、心配そうなその瞳。
「あの、ね」
ゴクリと唾を呑む音が、自棄に大きく耳元で聞こえる。
何て言えばいいの?
“しーチャンが春希のことを狙ってるから、気を付けて”?
“あの子に、近寄らないで”?
だけど、同じ所でバイトをするなら、そんなの通用しない事くらい、わかってる。
「胡桃? どうした?」
それがわかっているから言葉に詰まる私に、春希は少し困ったような、でも優しい笑顔で問いかける。
でも私は、
「ううん。何でもない」
やっぱりそれに、小さく首を振ったんだ。

