どうしたら良いのか分からず、中途半端な位置に立ったままでいた。


副社長には睨まれたまま。


「武井さん、中に入って下さい。斗真の怒りが爆発しないうちに。」


そう言って、ケラケラ笑う藤川様。


藤川様は謎だな。


「おい、そこで笑ってる女、お茶を入れろ。」


私は副社長の秘書じゃないし、あ、受付に帰らないと不味い。


私の言葉を遮られた。


「お茶お願いします。明日美ちゃんはすっかり僕を忘れているようだね。」


え、藤川様は私を知ってるんですか?



副社長のおじいちゃんですよね。



思い出せない。



お茶を用意すると、藤川様が私にも座るように進める。


「あのすみませんが、私はまだ勤務中で受付に戻らないといけません。」


又、清水斗真が睨む。


怖いです。


「受付に電話を入れた、昼食を取っていいそうだ。鰻重頼んだから食ってけ。」


それって、命令ですか。


私が鰻好きなの、どうして知ってるんだろ。


鰻重を食べるのは久しぶりで、自然とにやけた。


「相変わらずキモい奴だな。」


う、酷いよ。


「又、泣いて逃げるのか?」


「…………………………」


どうして、又こんな思いをしなけりゃいけないの。


斗真なんて嫌いだ。


もう絶対無視してやる。


鰻重に負けてしまった、自分が恥ずかしい。


情けない。


でも、大好物の鰻重だよ。


さっさと食べて戻ろう。