誰かが私の名を呼ぶ。


大きな手が、私を抱き起こす。

誰?


この手に何度も抱かれた気がする。


「…羽…琉…?」


薄れゆく意識の中で、羽琉の名を思った。


「何で羽琉なんだ…。
俺を見てくれ。
俺を愛してくれ。
…頼む。死なないでくれ。」


―遠くで誰かが呼びかけてる


父さん?母さん?


私は、白い闇に溶けていく。


何だかフワフワと心地いい。


上に昇って行く感じ。


そして今、私は水菊としての生涯を閉じた。