がたっと椅子から立ち上がり、泣いている私を早時様は、ただ黙って見つめていた。


早時様は、静かに女子達をかき分けて私の元へ来る。


多分、無意識に口から出たのだと思う。


「大丈夫。
俺が守ってあげるから。」


早時様は、私に囁いた。


まだ前世(かこ)の記憶は、あるのかな。


これは初めて出会った時に、早時様が言ってくれた言葉。


でも、始まるんだ。


鬼ではない、早時様のこれからが…。


たくさんの思い出を、紡いでいこう。


水菊ではなく、都として…。


私を愛してくれた、この人と。






   *…* 終 *…*