私は今、車に乗っている。 黒色の乗用車。 それ以上は車に詳しくないから分からないが、重厚感だけはある。 「シートベルト、ちゃんと締めろよ」 「分かってます」 隣には間宮先生。 おかしい。 この状況は、おかしい。 笑えない冗談だ。 この笑えない冗談を言い、この状況を作り出したのは、永瀬先生だ。 それは、つい10分ほど前のことだ。 あれから私はそっぽを向いたまま。 先生との間には不穏な空気が流れていた。 そこに職員室から戻って来たのが永瀬先生だった。 「あら、恭くん。いらっしゃい」