「夏には扇風機を持ち込んでやったよ。 俺は暑いのも嫌いだから。」 そこで私は、先生の話し方がいつもと違うように感じたワケを見つけた。 「『俺』…」 さっきから、先生は自分のことを“俺”と呼ぶ。 いつもなら、先生は“私”と呼んでいるのに。 “私”から“俺”と、自分の呼び方が変わっただけで。 なぜか私の中にあった先生への不信感が、少しだけ膨らみが小さくなった。 なんだ、間宮先生にも“普通”なところがあるんだと。 ただ、堅苦しいだけの人ではないのだと。