そして振り返りもせずに、そのまま無言で準備室の扉を開けた。 パタン、と閉まる音がする前に私はその場を去った。 肌を射すように冷たい空気は、私の理性を戒めるようだ。 なのに。 「……にがい…」 口の中に残る、苦味。 きっと先生のタバコの味。 夢のように温かい世界の準備室であったことは、夢なんかじゃないと言うように。 ばかだ、私。 残る苦味にすら、すがりたくなる。 先生はもしかしたら、なんて。 「……ははは…っ…」