「美琴?」




声をかけると、俺に顔が見えないように向こうを向いたまま言った。




「なんでも、ないです。あの…そこにあるの、全部持っていってもらえますか?」





「美琴、こっち向けよ。俺の言い過ぎだった」





ごめん。そう言おうとした。





が、美琴が口を開いたから言えなかった。





「颯斗さんが悪いんじゃありません…あたし…勝手に料理出したりしたから…」





違う。



そんなんじゃない。




無理して、お前が怪我するのが嫌だったんだ。




お前は悪くない。




俺がお前にはまってしまったから。




その思いは口に出さず、黙って美琴を抱き締めた。