「……俺が側にいたのに」 それでも今も玲子の胸に、痛みと共に襲いかかる幾つかの記憶がある。 緊急手術の麻酔が苦い霧のように晴れてきたとき、 消毒液臭い病室の床に這いつくばって、 鉄平に何度も頭を下げていた誠の震える背中。 当時の誠の恋人が、玲子が入院した病院の看護師をしていて、 暇さえあれば見舞いに来る誠にいら立ちながらも、とても親切にしてくれたこと。