玲子は、思い出したくない記憶を封じるように、必死で視線をそらす。



 あの日。



 誠と初めての夜を越えた翌朝、共に腕を組んで訪れたリーシュコードで。



 栄治、私たちを見てどんな顔するかな、と、楽しげにはしゃぎながら。



 鍵を開き、真鋳のドアノブを回し、

クローズドの札が掛かった扉を開けて……。



「……本当に俺、どうしようもないぐらい、あんたのことが好きだったんだよ」



 そのとき、ソファーに座り直した栄治が、

耳元にかがみ込んでぼそりと言った。