【小さな命】





春の日差しが優しい午後。


一通の手紙が届いた。



「オーナーからだ」


差出人の名前を見て
さくらは顔をほころばせる。


「オーナーって、与那国で雇ってもらってた?」

「うん」


懐かしい人からの手紙に、さくらの声は弾んでいる。


彼女は藤色の便箋を取り出すと、文字を追って瞳を動かし

「ふふっ」

と笑顔をこぼして、手紙を閉じた。


こんな優しい笑い方をするようになったのは、最近だ。


「オーナーさん、何だって?」

「んー。たまには遊びにおいでよって」

「そっか。落ち着いたら行こっか」

「うん」


与那国の話をすると

さくらの顔には
いつも
パッと花が咲く。


よっぽど素敵な思い出に彩られた、二年半だったのだろう。


いつだったか。
彼女が言った。


貴方を想って過ごしたあの月日は

今もあたしの宝物なの――と。