【最後の夜】



月明かりに照らされた部屋で

さくらの
生まれたままの姿を見たとき


俺は柄にもなく緊張して

心臓の音がバレない様に
この雨がもっと強くなって下さいと願った。


「……いい?」


返事の代わりに伸ばされた、彼女の腕を合図に

俺は
滑らかな肌に唇を沿わせた。


壊してしまわないよう
傷つけてしまわないよう

出来る限りの優しさで触れる。



……あったかいなぁ。


人の肌って
こんなに温かいものだったんだ。


どうして

涙が出るんだろ。


ただ触れてるだけなのに。


好きすぎて泣けるなんて
変かな。


だけど今
俺の腕の中にいる君は

やっぱりすごく
可愛くて

そしてすごく


こんなにも
愛しい。



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