俺はさくらを抱き寄せて

思いつく限りの
言の葉を並べた。



「どのくらいの時間が必要なのかは分かんないけど
全部けじめをつけて
俺が本当にさくらを守れるくらいの男になったら……
迎えにいくよ」



それは知らず知らずのうちに

別れの言葉ではなく
再会の約束に変わっていて……



「そしたら今度こそ一緒に与那国の夕日を見て、それから二人で暮らそう。
誰も俺らのこと知らない土地で、静かに暮らそう」



俺はまるで
台本でも用意されていたかのように


澱みなく

彼女に伝え続けた。




「そのうち子供なんか生まれて、近所の悪ガキ達と遊ばせてさ。
休みの日は家族で出かけたり、子供の運動会のビデオ撮ったり……」



俺、なんでこんなにスラスラしゃべってんのかな。

そんな疑問が頭に浮かんで

すぐに分かった。



――全部


俺が描いていた夢なんだ。




ガキの頃から
ずっと描いていた

幸せな幸せな

俺にはちょっと
幸せすぎる夢。


今、その夢の中に

君はものすごく鮮やかに
登場するんだよ……。




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