逃げて逃げて

辿り着いた白浜の宿。


カーナビみたいな小さくてショボいテレビがあって

何気ない仕草で
さくらは電源を入れた。


映し出されたのは

どっかの交差点で男が車に跳ねられ即死。
そんなニュース。


一瞬にして、俺達の空気は凍りついた。


顔面蒼白。
……って、こうゆう表情を言うんだ。

さくらの横顔を見ながら、俺は何故か、冷静にそんなことを考えていた。


そして気付いた。
彼女にこんな顔をさせているのは、俺だという事に。





その日の晩
さくらは震えてなかなか寝付かなかった。


俺は彼女の髪を撫でて

「大丈夫だよ」

と呪文のように繰り返した。



「さくらはきっと強くなれるよ」



それは確信というよりは
むしろ希望で


自分に向けて
言い聞かせた言葉でもあった。




強くなれる。

大丈夫だ。

俺は

強くなろう。




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