普段なら仕事の後は事務所にいったん戻るのに

この日の俺は
まっすぐ家に帰った。


ああー

この部屋って
こんなに広かったっけ。


夜が来て

近くの家から家族団らんの声が聞こえて

それがしだいに静まっていって

この世界で起きてるのなんか俺だけなんじゃないかってくらい、静かで

なのにまた外は白み始めて



“今日”が始まる。

俺はちっとも望んでいないのに。



……朝日
マジ、うぜー…。




「さくらぁ……」


呼ぶだけで愛しい名前があるのだと知った。


「…会いたい、なぁ」


駄々をこねる子供のように、欲してしまう存在があるのだと知った。



会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。



どうすればいいですか?


どうすれば……




 ピロリロリ~♪




……誰だよ。

人が真剣に凹んでるときに、こんな陽気な音楽鳴らす奴は。



―――って、これ


俺の着メロじゃん。