【逢いたい】



忘れるということが
これ程までに難しいとは思わなかった。




「ハヤト、最近変わったわよね」


常連のサチコさんはそう言うと、シャワーに濡れた身体をバスローブに包み、俺に寄り添った。


「……変わった?」

「うん」

「自覚ないな」

「恋してるでしょ」

「サチコさんにね」

「またまた~」


サチコさんは大人の女性だから、俺のこんな冗談にも笑って返してくれる。


「その彼女、幸せ者ね」

「サチコさんは幸せじゃないの?」

「幸せよ。こうしてハヤトと会えることが」

「じゃあもっと幸せになる事しよっか」


俺はサチコさんのバスローブに手をかけ、時間をかけることを楽しむかのように、ゆっくりと脱がせた。


「ねぇ、ハヤト…」

「ん?」

「今日は私の事、その彼女だと思って、してよ」



艶っぽい声でサチコさんが言った、その言葉に


「………」


俺の中で

濁流が生まれた。