俺は足を止めた。


本当、バカだ。

彼女の声を聞き逃せないこの耳も

彼女を振りきって歩き出せないこの足も。


さくらの気配が近づくのが分かって

俺はゆっくり
振り向いた。


凍えたように震えながら、徐々に開かれる彼女の唇。


ダメだ。
言わないで。


本当に終わりになってしまう……




「……好き」


……あぁ…。



「好きなの」


…俺も……。


「レオが好き」


…俺も――さくらが好きだよ。


だけど


「ごめん。さくら……」



辛い言葉を

言わせてごめんね。


おかしいね。


“好き”

本当なら
こんなに幸せな言葉は他にないはずなのに。



「ごめん……」



――好きだよ――。





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