石垣島がもっと遠かったら良かったのに。


例えば外国とか
地の果てとか


そしたら君と
もっと長く居られたのに。




―――飛行機…

着くの早ぇよ……。





「さくら、この後どうするの?俺は店に戻らなきゃダメだから、さくらが家に帰るなら同じ電車だけど」


空港は祭りのような人の群れ。

あまりに現実的で

強がらなきゃくじけそうな俺には
ちょうどいい……。



「……あたし、もう少しここにいるよ。レオは先に行って」

「わかった」


俺は歩き出した。
なるべく早足で。

周りの人たちも
同じくらいみんな早足だから


誰の目にもとまらず

誰にも気にされず


きっと
俺達の別れなんか

簡単に流してくれるだろう―――




「レオッ!!!」




―――…なんで


聞こえるんだよ。



こんな雑踏の中なのに


はっきりと

俺の名前を呼ぶ彼女の声が。