【好き】



石垣島行きのチケットを見せられた時


驚きより先に

嬉しさを感じた。



俺はなんて意思の弱い男なんだ。


彼女を傷つけたくないなんて言いながら

こうして彼女と一緒に旅行できることを、ひそかに喜んでる。



たったの三時間で
俺達は南国に到着し

その原色の世界に
魅せられた。


この一日はきっと
俺の人生で決して忘れられる事のない、最高の日で

綺麗な景色とか
美味い食べ物とか

いっぱい
あったはずなのに


なぜか思い出すのは

君の笑顔ばかり。




――ああ、でも

あの夕日だけは
はっきり覚えてる。





「俺さぁ」


「――ん…?」


「俺、親がいなかったんだ」


「……うん」


「今の店のオーナーが、俺の親代わり」


「……うん。知ってる」


「そっか」




今となっては
あの時どうしてそんな話をさくらにしたのかは分からない。


けど目の前の真っ赤な夕日に目を細めていたら

どうしても
言ってみたくなったんだ。