【偽り】




自分がこんなに素直じゃないなんて知らなかった。


彼女―――さくらの前で、俺は数え切れないくらいの嘘を口にした。


嘘ってゆうか
言い訳だ。


さくらの傍にいる為の
幼稚な言い訳。



苦労して手に入れた格闘技のチケットを

『一緒に行くはずだった友達が行けなくなった』

なんて理由つけて、彼女を誘った。



彼女が言ってくれた“ありがとう”が照れ臭くて、ケータイを握ったまま寝たふりをした。



彼女のぬくもりを感じたくて、恩着せがましく部屋に呼んで一緒に眠らせたこともある。



日曜の手作りディナーの日は

俺にとって
何よりの楽しみだった。




口が悪くて
お姉さんぶってて

すっごく強がりな



可愛いさくら。




これ以上
何も望んじゃいけない。


俺は自分の気持ちを必死で隠した。