―――最初…


どうしてこんな所に鏡があるのかと

一瞬本気で思った。



空虚な瞳。



彼女は道路をはさんだ向こう側のマンションの、窓際に佇み

何も映さない――光の無い瞳を

この世界に投げ出してた。



それは
俺自身にリンクした。


女の人から金をもらい
仲間たちとバカ騒ぎし
毎日さわがしく生きている俺の


真実の姿を


鏡に映したのが
彼女だった。



「ハ~ヤト。何ボケッとしてんだよ」


俺の肩に、同僚のタカノリの腕が絡みつく。


「ん?別に」

「元気ないなら、ほら、この本やるよ」


タカノリはよれよれになったエロ本を差し出し、巻頭のヌードグラビアを俺に突きつけた。