俺はその言葉に反応し、振り返った。

そして


「……!」


まるでトランプでもするかのように、当然のように俺の顔の前に差し出されたのは、5枚の福沢諭吉。


「はいこれ。お小遣い」


……何を
言ってるんだ?この人は。


俺が固まっていると、マユミさんは俺の胸元に、札束を押し付けた。


「受け取りなよ」

「……」

「あんたの母親もこうやって生きてたんだから」


マユミさんが鼻で笑いながら立ち上がったのと同時に、俺の膝の上へとひらひら落ちていく一万円札。



「じゃ、私先に帰るわね」







この日の出来事は

それからの俺の人生を大きく左右する。




俺は俺を産んだ人の生涯をたどるかのように


他人と抱き合うことで
金を得る道を選んだ。



混沌とした世界に

右も左も分からず飛び込んだ15の冬。



だけどそれは


君に出逢うための
カウントダウンでもあったんだ――…。





.