その場に座り込むと
俺は担任から受け取った茶封筒を開き

卒業文集を取り出した。


表紙をめくってみる。


すぐに目に飛び込んだのは

“将来の夢”

の文字。



『私の夢は花屋さんです。理由は、いつもお花に囲まれて生活できるからです…』


『僕はお医者さんになりたいです。病気で苦しんでいる人たちを一瞬で治せる薬を作りたいです』


『お父さんが大工さんだから、僕も大工さんになって大きな家を建てたいです』


『お金持ちになりたいから、ぜったい社長!』


『僕は警察官になって悪者のいない町にしたいです』


『F1レーサーになります』


『私は素敵な人と結婚して、早く子供を産みたいです』




“僕は……”



“私は……”





読み終わったとき、俺は涙を流していた。


文集の上にポタポタと落ちた涙は
クラスメイトが書いた作文の文字を滲ませた。



……いやいや。

おかしいだろ、俺。

なんで泣いてんだ?




――ああ……そうか。



きっと



“仰げば尊し”が

今頃になって沁みてきたんだ。