結婚式3時間の為の男選び

恋愛(ピュア)

ななせ。/著
結婚式3時間の為の男選び
作品番号
679565
最終更新
2012/01/04
総文字数
10,205
ページ数
36ページ
ステータス
未完結
PV数
237
いいね数
0
大きなスクランブル交差点での信号待ち。

青なのか、赤なのか、わからない。

信号を待っているわけではない。
どこに行くわけでもない。

ただ、そこにいるすべての人の足が止まっているから、
恵理も止まっているだけ。

騒がしいはずの車の音も全く聞こえない。

抜け殻になった恵理は、もう充電が切れた、
かかってくるわけもない携帯を、片手に握り締め、
ただただ、立っていた。

時刻はまだ六時だというのに、
すっかり、日は暮れていた。

つい、さっきまで明るかった夕日の余韻で、
暗さに慣れていない恵理の両目は、
その暗さを受け入れられない。

「前見て歩けや。」

後ろにいた、サラリーマンの肩が
恵理の右腕を容赦なく押しのけた。

抜け殻になった恵理の右腕に、
それを抵抗する力など残っているわけもなく、
カタンという、携帯を落とした音で初めて、
信号が青になったことに気づいた。

『渡らなきゃ』

・・・どこに行くあてもないけれど、
この、『人の波』に乗らなきゃ、
また取り残される。
また、私だけ、置いていかれる・・・

だけど、この暗さに慣れてない恵理の目の焦点は
前を見ようとせず、
だからといって、人の足元を見ているわけでもなく、
フラフラよろつきながら、
前から来た自転車のかごにお腹を殴られた。

『痛い・・・・』

・・・痛いよ・・・・痛いよ・・・。

恵理の目から涙が溢れてきた。

・・・何やっているんだろ・・・私・・・。
失恋したわけでもない。
仕事で失敗したわけでもない。
身内に不幸があったわけでもない。
病気になったわけでもない。
なのに、こんなに涙が出てくるのは、なぜ・・・?

『結婚』

それほど、この二文字の腫瘍が、
恵理の身体全体を侵し、転移しているようだ。

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