「……なんで、わたしが料理苦手って分かるの?」


苦手ではあってもまったくしないわけじゃないから、器具はある程度揃っているし、キッチンも片付いていると思う。

冷蔵庫の中身だって今は確かに少ないけれど、一人暮らしなら誰だってそんなもんだろう。

わたしが料理が苦手だってこと、決めつけられるような理由、どこかにあるとは思えないけど。


「まあ、そうだなあ……なんとなく、かなあ」


答えは、冬眞自身もあまり分かっていないようだ。

首を傾げて、きょとんとした顔でそんなことを言うから。


「……なんとなくで決めつけないでくれる?」

「でも当たってたんだろ? だって言い返さなかったし」

「……」


ほら、言い返せない、と冬眞が笑うから、わたしは戸棚から出した2個のカップラーメンを投げつけて部屋に戻った。

布団に潜ってぐだぐだして、しばらくしたらいい匂いがしてきたから布団から出たら、いつも食べているインスタントラーメンが何やらおいしそうな料理に変身してテーブルに置かれていた。


「インスタントのラーメンも、ちょっと手を加えるだけでもっとおいしくなるもんだよ」


食べてみたら、なるほど確かにいつもよりもかなりおいしい。

この男、自分で得意というだけのことはあるみたいだ。

家政夫としてここに置く価値がある……とは言い切れないけれど、なんとなく便利だなあとは思ってしまうから困った。