「これは何のまねかしら?」
リュリュカは今、シェゾに案内された店の中で、ドレスの試着をしていた
用意されたドレスは紫ではなく、黒色のドレスだった
「似合っているよ」
シェゾは鏡越しにリュリュカのドレス姿を楽しむ
「お似合いですよ。ウエストも細いですし、胸もおありですからそのドレスがよく映えてらっしゃいます。……ですがお顔が見えないのが残念ですわ」
シェゾと共に絶賛する店主は、リュリュカに被せられたベールに不満気味のようだ
「すまないね。彼女は重度の恥ずかしがり屋でね、ベールがないと目も合わせられないんだ」
「まぁそうですか。はぁ、お顔を拝見したかったです」
試着といえども、相手は悪魔
ベールを取ればリュリュカの匂いは風に乗ってこの部屋いっぱいに広がるだろう
そうなればリュリュカの命はない
だから店主の前でも取ることはできなかった
「よし。店主、これを貰うよ」
どうみても大金を持っていなさそうなのに、シェゾは平然と言ってのける
「はい、かしこまりました」
そしてなにやらシェゾと店主が一言、二言話すと、お金も払わずに入り口まで付き添ってくれた
「では行こうか」
「あ、待って!」

